この問題の使い方

  1. まず企業概要と財務データをじっくり読み、D社の収益性・安全性・効率性の特徴を把握してください。
  2. 設問ごとに指定字数内(または計算プロセス)を実際に書いてみましょう。
  3. 解答を書き終えたら「解答・解説を見る」ボタンをクリックして解答例と照らし合わせます。
  4. 第3問は計算の過程・根拠を丁寧に示す練習をしましょう。現価係数は問題文で与えられる想定です。

【問題】D社の事例

企業概要(与件文)

D社は、地方都市で40年の歴史を持つ従業員28名の食料品卸売業者である。地元スーパーや飲食店への食材供給を行っており、地域密着の営業スタイルが強みである。近年、大手EC食品卸との競合激化により売上が低迷しており、収益性の改善が課題となっている。

現在、冷凍・冷蔵設備の老朽化が進んでおり、設備投資(2,000万円)を検討している。この設備投資により年間コストが150万円削減できる見込みであるが、投資回収期間と設備の耐用年数(10年)を考慮した意思決定が求められている。

財務データ(D社 vs 業界平均)

指標 D社 業界平均 評価
売上高 8億円(前年比▲5%) 低迷
売上総利益率 18% 22% ▲4pt
営業利益率 2% 4% ▲2pt
流動比率 110% 130% ▲20pt
自己資本比率 30% 40% ▲10pt
棚卸資産回転率 8回 12回 ▲4回
固定資産回転率 3.5回 4.2回 ▲0.7回

設問

第1問

上記財務データを用いてD社の収益性・安全性・効率性の課題を、業界平均と比較しながら120字以内で分析せよ。

配点:30点 字数目安:120字以内

0 / 120字

第2問

D社の売上総利益率が業界平均を下回っている原因を推定し、改善策を100字以内で述べよ。

配点:25点 字数目安:100字以内

0 / 100字

第3問

冷凍・冷蔵設備への投資(投資額:2,000万円、年間コスト削減額:150万円、耐用年数:10年)について、回収期間法とNPV法(割引率5%)で投資判断を行い、それぞれの結果を示せ。なお、10年・5%の現価係数は7.722とする。

配点:25点 計算プロセスを明示すること

0字

第4問

D社の今後の資金調達と財務健全化に向けた方針を100字以内で提言せよ。

配点:20点 字数目安:100字以内

0 / 100字

【解答例・解説】

第1問 収益性・安全性・効率性の分析(配点30点)

解答例(115字)

収益性は売上総利益率18%・営業利益率2%と業界平均を下回り低収益状態にある。安全性は流動比率110%・自己資本比率30%と業界平均以下で短期・長期ともに財務リスクが高い。効率性は棚卸資産回転率8回と業界平均12回を大きく下回り在庫過多が課題である。

設問分析

  • 設問要求:収益性・安全性・効率性の「3軸」で分析——1軸でも欠ければ大幅減点
  • 注目すべき与件文:財務諸表の数値(売上総利益率・流動比率・棚卸資産回転率)と業界平均の比較表
  • 字数配分目安:3軸 × 約35〜40字で均等に書くと115字程度に収まる
  • 書く順序:収益性→安全性→効率性の順が最も採点しやすく評価されやすい

解答のポイント(採点官が見る要素)

  • 収益性・安全性・効率性の3軸を必ず全部触れる——1つでも欠けると大幅減点
  • 業界平均との具体的な数値比較で根拠を示す——「低い」だけでは不十分
  • 各指標から導かれる問題点を一言で明示する(低収益・財務リスク・在庫過多)

よくある失点パターン

  • 3軸のうち2軸だけ書いて字数が尽きる:字数配分を事前に計算してから書く
  • 数値を書かずに「低い」「高い」の形容詞だけで終わる:必ず「○%と業界平均△%を下回る」の形で書く
  • 原因・改善策まで書いてしまい設問範囲を超える:第1問は「分析・現状把握」にとどめる
  • 効率性で売上債権回転率と棚卸資産回転率を混同する:問題文の財務データを注意深く確認する

加点のコツ

  • 各軸の末尾に「〜が課題である」「〜が懸念される」と問題の性質を一言で示すと採点官が評価しやすい
  • 「業界平均○%に対して△%」という形で比較数値を明示するとエビデンスが明確になる
  • 効率性指標は「回転率が低い→在庫過多→資金が滞留→安全性にも悪影響」という因果関係を意識して書くと深みが増す
第2問 売上総利益率低下の原因と改善策(配点25点)

解答例(95字)

原因として大手EC卸との競合激化により価格競争に巻き込まれ値引き対応が増加していることと、売れ残りによる廃棄ロスが発生していることが推定される。改善策として高付加価値商品へのシフトと在庫管理強化による廃棄削減を行う。

設問分析

  • 設問要求:「原因(推定)」と「改善策」の2つを要求——どちらか一方だけでは半分の得点
  • 注目すべき与件文:EC競合の脅威・商品構成・廃棄ロス関連の記述、売上高と原価の推移
  • 字数配分目安:原因40〜50字、改善策40〜50字が理想的な配分(計90〜100字)
  • 「推定」とある設問は根拠を一言添えることで論理性が評価される

解答のポイント(採点官が見る要素)

  • 設問が「推定」なので与件文から合理的に導く——決めつけではなく根拠を示す
  • 価格競争(値引き増加)と廃棄ロスの2点が粗利率低下の典型原因として評価される
  • 改善策は原因に対応させる——値引き対策なら付加価値向上、廃棄対策なら在庫管理

よくある失点パターン

  • 原因だけ書いて改善策を書き忘れる:設問要求の「〜の原因と改善策」を必ず両方書く
  • 原因と改善策が対応していない:「価格競争が原因→在庫削減で対応」のようなズレは減点
  • 与件文に記述のない原因を推測する:「推定」でも与件文の根拠に基づくこと
  • 改善策が抽象的すぎる(「品質を上げる」「コストを下げる」):具体的な手段まで言及する

加点のコツ

  • 原因を2点(値引き増加・廃棄ロス)列挙してから、改善策もそれぞれに対応させて2点書くと採点官が評価しやすい
  • 「高付加価値商品へのシフト」は「値引き競争からの脱却」という戦略文脈で説明すると説得力が増す
  • 第1問の棚卸資産回転率低下の課題と改善策を整合させると、設問間の一貫性が評価される
第3問 回収期間法・NPV法による投資判断(配点25点)

【回収期間法】

回収期間 = 投資額 ÷ 年間キャッシュフロー = 2,000万円 ÷ 150万円/年 ≒ 13.3年 耐用年数(10年)を超えるため、投資回収不可能。 → 回収期間法による判断:投資非推奨

【NPV法(割引率5%、現価係数:7.722)】

NPV = 年間キャッシュフロー × 現価係数 − 初期投資額 = 150万円 × 7.722 − 2,000万円 = 1,158.3万円 − 2,000万円 = −841.7万円(マイナス) NPVがマイナスのため投資すると企業価値が毀損する。 → NPV法による判断:投資非推奨
結論:回収期間法・NPV法の両手法ともに投資は推奨されない。年間コスト削減額150万円では2,000万円の投資を10年間で回収することは不可能であり、現時点では設備投資の実施を見送ることが合理的である。

設問分析

  • 設問要求:回収期間法とNPV法の「両方」で計算し、投資の可否を判断する
  • 注目すべき与件文:初期投資額・年間CF(コスト削減額)・耐用年数・割引率・現価係数
  • 字数配分目安:計算過程は数式で明示、文字解答は結論+理由で50〜70字
  • 現価係数は問題文で必ず与えられる——問題文の数値を正確に使用する

解答のポイント(採点官が見る要素)

  • 計算プロセスを丁寧に明示する——答えだけでは部分点しか取れない
  • 現価係数は問題文で与えられる場合が多い(10年5%で7.722)——確実に利用する
  • 両手法ともに結論を「投資推奨/非推奨」と明確に述べる——曖昧な結論は減点
  • 回収期間法では「耐用年数との比較」がポイント——数値計算だけでなく判断を示す

よくある失点パターン

  • 年間CFの算出ミス:税引後利益+減価償却費の手順を省いて単純に「コスト削減額=CF」としてしまう
  • 回収期間法で耐用年数との比較を書き忘れる:計算結果と耐用年数を比較して「○○年>耐用年数△年のため非推奨」と明示する
  • NPVの符号(プラス/マイナス)を間違える:NPV=現在価値合計-初期投資額であることを確認する
  • 両手法の結論を書かずに計算だけで終わる:「→投資推奨/非推奨」の一行判断を必ず加える

加点のコツ

  • 計算式を「回収期間 = 投資額 ÷ 年間CF = ○○万円 ÷ △△万円 = □□年」の形で明示すると部分点が確保できる
  • 最後の「結論」段落で「両手法ともに非推奨の理由+改善のための条件(CFが○万円以上なら採算が取れる)」まで言及すると加点につながる
  • 時間に余裕があれば「CF改善のシナリオ」(売上増加・コスト削減の組み合わせ)を一言添えると深みが増す
第4問 資金調達と財務健全化の方針(配点20点)

解答例(96字)

自己資本比率の改善を優先し、内部留保の積み上げと無駄な固定資産の売却・リース活用で財務基盤を強化する。短期借入依存を減らし、長期安定的な資金調達体制を整えることで流動比率を業界平均水準(130%)に引き上げることを目指す。

設問分析

  • 設問要求:資金調達と財務健全化の「方針」——単発の施策ではなく方向性を示す
  • 注目すべき与件文:第1問の安全性(流動比率・自己資本比率の低さ)の課題と整合させる
  • 字数配分目安:資金調達の方向性40〜50字、財務健全化の目標40〜50字(計90〜100字)
  • 「業界平均との比較で目標水準を設定」という具体性が採点官に評価される

解答のポイント(採点官が見る要素)

  • 財務健全化の方向性は「自己資本比率改善」「流動性改善」「調達の安定化」の3点で整理
  • 第1問の分析(安全性の低さ)と矛盾しない提言になっているか確認する
  • 「業界平均水準に引き上げる」という具体的な目標水準を示すと説得力が増す

よくある失点パターン

  • 第1問の分析と矛盾する施策を提案する:第1問で「安全性の低さ」を指摘した場合、第4問でも安全性改善に向けた施策が必要
  • 「借入を増やして投資する」という攻撃的な施策だけを提案する:現時点では安全性改善が優先のため財務保全的な施策が評価される
  • 自己資本と他人資本の違いを意識せず「資金調達」とだけ書く:具体的な調達手段(内部留保・リース・長期借入等)を明示する
  • 目標数値が与件文の業界平均と乖離している:業界平均を目標水準として使用する

加点のコツ

  • 「短期的施策(固定資産売却・リース活用)と中長期施策(内部留保積み上げ)」に分けて書くと構成の論理性が評価される
  • 第3問で投資非推奨の結論を出した場合、第4問で「その投資資金を財務健全化に充てる」という流れにするとストーリーとして一貫性が増す
  • 「政策融資(日本政策金融公庫)や信用保証協会の活用」を加えると中小企業に対する実務知識として加点になる可能性がある