事例Ⅰの特徴・出題傾向

出題テーマ

  • ▸ 組織構造(機能別・事業部制・マトリクス)
  • ▸ 人事制度(評価・報酬・採用)
  • ▸ 経営戦略(多角化・M&A・事業承継)
  • ▸ 組織文化・風土の変革
  • ▸ リーダーシップ・モチベーション管理

設問の傾向

  • ▸ 「〇〇の理由を述べよ」→ 戦略的背景を問う
  • ▸ 「〇〇の問題点と対策を述べよ」→ 課題解決型
  • ▸ 「〇〇が成功した要因を述べよ」→ 強み分析型
  • ▸ 「今後の施策を提言せよ」→ 提言型
  • ▸ 設問間に連携がある(第1問の分析が後の問に影響)

事例Ⅰ攻略のポイント

事例Ⅰは「なぜその経営判断をしたのか」という戦略的理由を問う設問が多いです。SWOT分析・経営環境の変化・会社の強みを与件文から読み取り、「〇〇という強みを活かし、〇〇という環境変化に対応するため」という論理構成で解答する習慣をつけましょう。

解答フレームワーク

現状の課題
原因の特定
具体的施策
期待効果

採点官は「設問要求に正対しているか」「与件文の根拠を使っているか」「施策が具体的か」の3点を重視する。このフレームワークはその3点を自然に満たせる構成で、最頻出の「問題点と改善策」型設問に最適。
【各ステップの書き方】課題:与件文に「〇〇が問題」「〇〇ができていない」と明記された箇所を引用。原因:「なぜその問題が起きているか」を与件文の事実(権限集中・制度の不備等)から導く。施策:「〇〇制度を導入する」「〇〇体制を整備する」と制度・仕組みで記述。効果:「意思決定の迅速化」「モチベーション向上」など具体的な改善結果を示す。
【向く場面】「問題点を指摘し改善策を述べよ」「課題と対策を述べよ」型。【向かない場面】「強みを活かした施策」型には②を使う。
【注意点】施策を「意識を高める」「風土を変える」と書くのはNG。必ず制度・仕組みとして具体化すること。

解答テンプレート

課題は〇〇(与件文から)である。原因は〇〇(与件文の記述)のため〇〇である。施策として①〇〇、②〇〇を実施する。これにより〇〇が改善され、〇〇の実現につながる。

自社の強み
環境・機会
活かす施策
競争優位

採点官はSO戦略(強み×機会)の論理的連鎖が書けているかを見る。「強み→機会→施策→競争優位」が一本の線でつながっていると高得点につながる。
【各ステップの書き方】強み:与件文に「高い技術力」「長年の顧客関係」など肯定的に書かれた記述を引用。機会:外部環境の変化(市場拡大・規制緩和・競合の動向等)を与件文から拾う。施策:「強みである〇〇を活かして〇〇を行う」と強みと施策を明示的に結ぶ。競争優位:「差別化」「参入障壁」「顧客囲い込み」などの効果を示す。
【向く場面】「強みを活かして〇〇せよ」「成長戦略を提言せよ」型。【向かない場面】「問題点と解決策」型には①を使う。
【注意点】強みと施策が論理的につながっていない「なんとなく列挙」は評価されない。「強みである〇〇を活かし」という接続を必ず入れること。

解答テンプレート

A社の強みである〇〇を活かし、〇〇という環境変化に対応するため、①〇〇、②〇〇を実施する。これにより〇〇という競争優位を確立できる。

現状の問題
目指す姿
制度・仕組み
人材・組織効果

採点官は「評価・育成・処遇」の3点が揃っているかを確認する。1点だけでは部分点にとどまるが、3点を制度として具体的に書けると満点に近づく。
【各ステップの書き方】現状の問題:「年功序列中心で成果が評価されない」など与件文の人事上の課題を明示。目指す姿:「成果に応じた処遇で若手のモチベーションを引き出す」など。制度・仕組み:MBO(目標管理制度)・OJT計画・成果連動賞与・キャリアパスの明示を具体的に。人材・組織効果:「優秀人材の定着」「組織力の底上げ」など。
【向く場面】「人事制度の改革を述べよ」「モチベーション向上策を提言せよ」型。【向かない場面】組織構造(権限・部門設計)の問題には④を使う。
【注意点】「評価制度を整える」だけでなく、評価の「基準・方法・反映先(昇格・賞与)」まで踏み込むと大きく差がつく。

解答テンプレート

現状の問題は〇〇である。改善策として、①評価基準を明確にし〇〇を評価する、②OJT・〇〇により人材を育成する、③成果に応じた〇〇制度を導入する。これにより従業員のモチベーション向上組織力強化が図れる。

集権の問題
権限委譲の範囲
管理の仕組み
意思決定の迅速化

採点官は「委譲する権限の具体性」と「委譲後の管理体制」の両方を見る。「権限委譲する」と書くだけでは不十分で、「何の権限をどの範囲で」という具体性が得点を左右する。
【各ステップの書き方】集権の問題:「社長への意思決定集中により現場対応が遅れている」など与件文の記述を根拠に指摘。権限委譲の範囲:「採用・予算執行・案件承認権限を部門長に委譲」と具体的な業務を列挙。管理の仕組み:「月次業績報告制度」「KPI管理」「定期1on1」など委譲後の管理手段を明示。意思決定の迅速化:「現場対応力の向上」「部門長の責任意識向上」など効果で締める。
【向く場面】「権限委譲の方法を述べよ」「組織の自律性を高めるための施策を提言せよ」型。
【注意点】権限委譲だけ書いて管理体制に触れないと「無秩序な委譲」とみなされる。「委譲と管理は必ずセット」が鉄則。

解答テンプレート

オーナー経営者への集権により意思決定の遅延・現場対応力の低下が生じている。〇〇部門長へ〇〇権限を委譲し、業績目標・報告制度で管理する。これにより意思決定の迅速化部門長のモチベーション向上が図れる。

後継者の選定・育成
知識・ノウハウの移転
権限の段階的移譲
円滑な事業継続

採点官は「育成・信頼構築・権限移転」の3軸が段階的に書けているかを見る。時間軸(短期・中期・長期)を意識して書くと論理的構成として高評価を得やすい。
【各ステップの書き方】後継者の選定・育成:「現場業務の経験を積ませる」「OJTで経営判断の場数を踏む」など実践的育成を具体的に。知識・ノウハウの移転:「経営理念・判断基準の文書化」「主要顧客への同行」など暗黙知の形式知化を提案。権限の段階的移譲:「部門長代行→副代表→代表就任」の段階論で記述。円滑な事業継続:「社員の信頼獲得」「取引先への対外的信頼確立」など効果を示す。
【向く場面】「事業承継に向けた施策を述べよ」「後継者育成の方法を提言せよ」型。
【注意点】後継者の「資質向上」だけでなく「周囲(社員・取引先)の信頼構築」に触れないと片手落ちになる。与件文で後継者の現状の課題(経験不足・信頼不足等)を必ず確認すること。

解答テンプレート

後継者候補を〇〇として、①OJTと外部研修で経営知識・リーダーシップを育成し、②主要取引先・金融機関への同行で人脈を引き継ぎ、③〇〇部門の責任者として権限を段階的に移譲する。これにより事業の継続性確保と組織の安定的発展が図れる。

シナジー分析
リスク評価
組織・人員の対応
収益基盤の多元化

採点官は「なぜその事業に多角化するのか(シナジーの論拠)」と「リスク管理への言及」を確認する。「利益拡大のため新事業に参入する」という漠然とした解答は評価されない。
【各ステップの書き方】シナジー分析:「既存の顧客基盤・技術・ブランドとの関連性」を与件文から抽出し、なぜ参入できるかを明示。リスク評価:「試験的小規模参入」「段階的展開」「専任チームによる既存事業との組織的分離」でリスクを低減。組織・人員の対応:「新規事業専担チームの設置」「外部人材の活用」など。収益基盤の多元化:「既存事業の縮小リスクへの対応」「安定収益の確保」など。
【向く場面】「新規事業展開の方向性を述べよ」「多角化戦略を提言せよ」型。
【注意点】与件文に関連する事業への兆候や顧客ニーズの記述がない場合は、その多角化の根拠が弱くなる。与件文との整合性を必ず確認すること。

解答テンプレート

既存の〇〇(技術・顧客基盤)とのシナジーが期待できる〇〇事業へ関連多角化する。①リスク低減のため小規模パイロット展開から開始し、②専任チームを設置して既存事業との組織的分離を図り、③〇〇部門のノウハウを転用して参入コストを抑制する。

現状診断
目標・ビジョン設定
施策展開
定着化・継続改善

採点官は「個人・制度・文化の3層で施策が揃っているか」を確認する。1層の施策だけでは「視野が狭い」とみなされ部分点にとどまる。
【各ステップの書き方】現状診断:与件文から「閉塞感・部門間対立・提案が通らない」など活力低下の根拠を引用。目標・ビジョン設定:「どのような組織を目指すのか」を明示(心理的安全性・自律型組織等)。施策展開:①個人レベル(成果インセンティブ・能力開発機会)②制度レベル(評価制度・1on1・部門横断プロジェクト)③文化レベル(経営理念の共有・提案制度・表彰制度)の3層で提案。定着化・継続改善:PDCAで継続的に改善する旨を示す。
【向く場面】「組織の活力を高める施策を提言せよ」「変革を推進するために何をすべきか」型。
【注意点】「文化を変える」だけでは採点されにくい。文化変革も「制度・仕組みとして何をするか」に落とし込むことが必須。

解答テンプレート

組織活性化に向け、①個人レベルでは成果連動型インセンティブと能力開発機会を提供し、②制度レベルでは部門横断プロジェクトと定期的な1on1面談を導入し、③文化レベルでは経営理念の共有・浸透活動と提案制度により主体的な行動を促進する。

頻出キーワード一覧

組織構造・設計

権限委譲 分権化 組織のフラット化 機能別組織 事業部制組織 マトリクス組織 部門間連携 情報共有の仕組み コーポレートガバナンス

人材育成・評価

OJT(職場内訓練) Off-JT(職場外訓練) 人材育成 目標管理制度(MBO) 360度評価 評価制度の透明性 キャリアパスの明示 メンター制度

モチベーション・組織文化

モチベーション向上 組織活性化 従業員エンゲージメント 組織文化の醸成 チームワークの強化 多能工化 専門人材の確保 女性・シニア活躍推進

経営戦略・事業承継

事業承継 多角化戦略 コアコンピタンスの強化 M&A・アライアンス 選択と集中 経営理念の浸透 後継者育成計画 関連多角化 新規事業の内部起業 経営資源の最適配分

採用・労働市場

中途採用 新卒採用計画 多様な人材確保 ダイバーシティ推進 副業・兼業容認 テレワーク・在宅勤務 採用ブランディング 離職率の低下 働き方改革 インターンシップ活用 シニア・高齢者雇用

リーダーシップ・マネジメント

変革型リーダーシップ サーバントリーダーシップ コーチング ファシリテーション 心理的安全性 ミドルマネジメントの強化 ビジョンの共有 1on1ミーティング チェンジマネジメント 組織学習・ナレッジマネジメント

設問パターン別 解答のポイント

設問パターン① 強みを活かした施策

「A社の強みを活かして〇〇を実現するための施策を述べよ」タイプ

  • 与件文から「強み」に関する記述(独自技術・顧客関係・人材力など)を必ず引用する
  • 「強みを活かす」=強みと施策を論理的に結びつけること。なんとなく列挙しない
  • 施策は具体的に(「組織を整える」ではなく「専門チームを設置し〇〇を担当させる」)
  • 最後に「競争優位の確立」「持続的成長」などの効果で締める

解答例(120字)

A社の強みである長年培った顧客との信頼関係と技術力を活かし、既存顧客へのソリューション提案営業を強化する。専任担当制を導入し、顧客課題を深掘りする体制を構築することで、受注単価の向上と継続取引の拡大による安定収益の確保を図る。

設問パターン② 組織の問題点と解決策

「組織上の問題点を指摘し、その解決策を提言せよ」タイプ

  • 問題点は「与件文に書かれている事実」から導く。主観で決めつけない
  • 問題点→原因→施策→効果の流れを1つの段落でまとめる(設問によって優先度調整)
  • 解決策は「制度・仕組み」として書く(「意識を高める」ではなく「〇〇制度を導入する」)
  • 複数の問題がある場合は優先度の高いものを1〜2つに絞って深く書く

解答例(140字)

問題点は、トップに意思決定が集中し現場の対応が遅れていることである。原因は権限委譲が不十分なためである。対策として各部門長に採用・予算執行権限を委譲し、月次の業績報告制度で管理する。これにより意思決定の迅速化と部門長のモチベーション向上を図る。

設問パターン③ 人事制度の改善

「人事制度・評価制度をどのように改善すべきか述べよ」タイプ

  • 現状の人事制度の問題(年功序列・評価基準不明確など)を与件文から確認する
  • 「評価・育成・処遇」の3つの観点から提案すると網羅性が高まる
  • 成果主義一辺倒ではなく、プロセス評価・能力評価も加えたバランスある制度を提案する
  • 制度変更の目的(モチベーション向上・優秀人材の定着等)も明記する

解答例(130字)

改善策は①目標管理制度(MBO)を導入し、定量・定性目標を設定して評価基準を明確化する、②OJTとOff-JTを組み合わせた育成計画を策定する、③業績目標達成度に連動した賞与制度を設ける、の3点である。これにより優秀人材の定着とモチベーション向上を図る。

設問パターン④ 経営戦略の立案

「今後の経営の方向性・戦略を述べよ」タイプ

  • 与件文のSWOT要素(強み・弱み・機会・脅威)を整理し、方向性の根拠を示す
  • 「強みを活かして機会を捉える(SO戦略)」を基本軸に据えて記述する
  • 抽象的な方向性ではなく、具体的な事業ドメイン・ターゲット・施策を明示する
  • 経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)の裏付けも簡潔に添える

解答例(140字)

今後の方向性は、長年培った技術力と顧客ネットワークという強みを活かし、既存事業の深耕と関連分野への選択的多角化を両輪とする成長戦略である。具体的には主力顧客へのソリューション提案を強化するとともに、隣接市場への展開で収益基盤を多元化し、経営リスクの分散を図る。

設問パターン⑤ リーダーシップ・経営者の役割

「経営者はどのような役割を果たすべきか」「リーダーとして何をすべきか」タイプ

  • 「ビジョンの提示→共感の形成→実行支援→成果の承認」の流れを意識する
  • トップダウン型とボトムアップ型のリーダーシップを使い分ける視点を示す
  • 変革期には「変革型リーダーシップ」(ビジョン・動機づけ・変革推進)が問われやすい
  • 具体的な行動・発言・制度化を通じたリーダーシップ発揮の方法を書く

解答例(140字)

経営者は、①明確なビジョンと経営理念を全社員に提示して共感を醸成し、②権限委譲で現場の自律性を高めながら重要意思決定に集中し、③成果を適切に評価・承認することで従業員のモチベーションを高める役割を果たすべきである。変革を主導する旗手として組織を牽引することが求められる。

よくある失点パターンと改善策

事例Ⅰで得点を落としやすいポイント

以下の失点パターンは実際の答案で繰り返し見られるものです。自分の解答と照らし合わせてチェックしてください。

NG例:やりがちな失点パターン

NG① 与件文を無視した施策を書いてしまう

「人材育成のため研修を充実させる」のように、与件文に根拠がない施策を書いてしまうケース。採点者は「与件文にある情報から導いた解答かどうか」を重視する。

改善策:施策を書く前に、与件文のどの記述を根拠にしているかを確認する習慣をつける。根拠のない施策は削除するか、与件文に結びつけ直す。

NG② キーワードの羅列で解答が薄くなる

「権限委譲・OJT・目標管理制度を導入する」のように、キーワードを並べるだけで「なぜそれが必要か」「どんな効果があるか」が書けていない解答。字数を埋めているように見えて得点が低い。

改善策:各施策に「〇〇という課題があるため」という原因と「これにより〇〇が改善される」という効果を必ずセットで記述する。

NG③ 組織論と無関係な財務・数値の話を持ち込む

事例Ⅰは組織・人事の事例であるにもかかわらず、「売上を〇%増加させる」「ROAを改善する」など財務指標への言及を多用してしまうケース。事例Ⅰでは組織・人事の観点から解答することが求められる。

改善策:解答の中心を「組織の在り方・人材の育成・制度の整備」に置く。財務への言及は「組織改革の結果として収益改善につながる」程度の間接的な形にとどめる。

NG④ 設問の問いかけとズレた解答をする

「問題点を述べよ」という設問に対して対策ばかり書く、「施策を提言せよ」という設問に対して現状分析ばかり書くケース。設問文の動詞(述べよ・提言せよ・分析せよ)を見落とすと大幅な減点につながる。

改善策:解答を書き始める前に設問文を再読し、「何を問われているか(問い)」「何を書くべきか(解答の方向性)」を必ず確認する。

NG⑤ 「意識を高める」「コミュニケーションを活性化する」で終わる

精神論・抽象論で終わり、具体的な「制度・仕組み」の提案がない解答。「チームワークを高める」「意識改革を行う」といった表現は採点上評価されにくい。

改善策:「意識を高める」→「目標管理制度(MBO)を導入して個人目標を明確化する」のように、具体的な制度・仕組み・施策名に置き換えて記述する。